私は高校生の頃、スケートに行くのが大好きでした。倉敷のスケートリンクで友人と一緒に滑る時間は、私にとって特別な楽しみでした。リンクの上を優雅に滑るフィギュアスケート選手たちを見ながら、自分なりのスタイルで滑る喜びに浸っていました。

しかし、その楽しみはある日、思いがけない転倒によって一変しました。不注意から後ろ向きに転倒し、後頭部を強く打ってしまったのです。それ以来、スケートが急に怖いものに思えるようになり、転倒への恐怖が心に深く刻まれました。リンクに立つたびに、また転ぶのではないかという不安に囚われ、まったく上達しなくなりました。

小さなスケーターから学んだ教訓

ある日、慎重にリンクの端を滑っていた私の目の前で、小さなスケーターが華麗に転倒する瞬間を目にしました。彼女は見事にバランスを崩して倒れましたが、すぐに何事もなかったかのように立ち上がり、再び滑り始めたのです。その姿を見て、私は衝撃を受けました。彼女は転倒を恐れるどころか、当たり前のように受け入れ、次の瞬間には再び滑ることに集中していたのです。

その瞬間、私は大きな気づきを得ました。それは、「転倒を恐れず受け入れること」がスケート上達の鍵だということです。転倒そのものを避けようとするのではなく、転倒を前提として、どうやって安全に倒れるかを学ぶことが大切だと理解しました。

スケートでは、前に重心をかけることで転倒しても安全に着地できる。この「前に転倒することで安全に転べる」というシンプルな原則は、人生における挑戦にも応用できるものです。

例えば、失敗を恐れて挑戦を避けるのではなく、あえて前に進んで失敗を受け入れることで、成長の機会を得る。新しいプロジェクトや苦手な人との対話でも、この教訓が役立ちました。失敗を恐れず前に進む姿勢が、新たな居場所や自分の可能性を広げる鍵となります。

恐怖を克服して見えた成長

その日を境に、私のスケートに対するアプローチは劇的に変わりました。前に重心を置いて滑ることを意識し始めると、転倒の恐怖が少しずつ薄れ、スムーズに滑る楽しさが戻ってきました。技術も向上し、転ぶことよりも「どうやって立ち上がるか」「より上手に滑るか」に集中できるようになりました。

振り返ると、スケート初心者が不安定にリンク上を滑り、転んでは立ち上がる姿は、まさに新しい挑戦を始める時の私たちの姿そのものです。最初は上手くいかず、転倒することも避けられません。しかし、その転倒こそが学びのチャンス。立ち上がる勇気があれば、再び挑戦する自信が湧いてきます。そして、挑戦自体が楽しくなり、技術も次第に上達するのです。

新しい居場所をつくる道筋

このスケートでの経験は、私がその後の人生で直面する挑戦や困難において大きな支えとなりました。特に60代後半で協会を立ち上げたとき、その不安と恐怖はスケートで感じたものに似ていました。新しい事業を立ち上げる際、失敗への恐れがついてまわります。年齢を重ねた自分に対しての不安もありました。しかし、スケートの経験から学んだ「転んでも立ち上がる力」が私に勇気を与え続けました。

成功の道は、転倒を避けることではなく、転んだ後にいかに素早く立ち上がり、再び前進できるかにかかっています。新しい居場所をつくるためには、何度も失敗を経験し、そのたびに立ち上がる必要があります。

失敗を恐れずに挑む勇気

行動を起こすために必要なのは、ほんの少しの勇気です。スケートで学んだように、転倒は避けられないことです。しかし、転倒は成長へのステップです。自分の可能性を信じて一歩踏み出すことで、たとえ転んでも、また立ち上がる力が身につきます。その一歩一歩が、次の成功へとつながるはずです。

もしあなたが新しい挑戦に直面しているなら、失敗を恐れず前に進んでください。転倒は終わりではなく、新たなスタート。失敗を受け入れ、そこから学び、再び立ち上がることで、あなたの可能性は広がります。

「居場所をつくる」ということは、恐怖や不安を乗り越え、自分の強みや興味を活かして他の人々と共有できる場所を築くことです。ほんの少しの勇気を持って前に進むことで、失敗の中にこそ成長の種があることに気づくでしょう。失敗を経験し、そのたびに立ち上がることで、より強く、より自信に満ちた自分に出会うことができます。

スケートで学んだ「転倒しても立ち上がる力」は、私の人生を支えた大切な教訓です。この教訓が、私が「あなたの居場所をつくる」ための取り組みにおいても大きな支えとなっています。転んでも立ち上がり、前へ進む勇気こそ、新しい世界を切り開き、自分だけの居場所を築くための鍵になるはずです。

投稿者プロフィール

小橋広市
小橋広市
武蔵野美術大学卒業後、東京の建築デザイン事務所に就職。その後、京都で建築士事務所を設立。人の共通心理をとりいれた店舗や狭小住宅の企画設計を生業としていたが、59歳で心筋の半分以上が壊死する重度の心筋梗塞で倒れ、事務所を廃業。紆余曲折を経て住環境ライフコンディショニングコーチとしてリスタート。近年では、企業研修において、それぞれの組織に応じた内容にカスタマイズし提供している。

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