「痩せたい」では続かないのは、それが数字だからです。目の前の誘惑に、数字は勝てません。ラーメン屋で自分の決めごとと戦った話から、続く人が持っている「場面」の作り方と、今日ひとつだけ決めておくことをお伝えします。

始めた日は、たいてい決まっています。
やめた日は、はっきりしません。
ダイエットでも、勉強でも、朝のウォーキングでも。

二手に分かれた道の前に立つ人形

「痩せたい」では、続きません

ダイエットをしたことのある方は多いと思います。目的を聞けば、たいていは「痩せたい」です。当たり前のようですが、続かない原因はここにあります。

始めた日が決まっているのは、その日に理由があったからです。健康診断の数字を見た。写真に写った自分を見た。何かがきっかけになっています。ところが、そのきっかけは日が経つと薄れます。

痩せたいというのは、数字の話です。体重を3キロ減らす。ウエストを5センチ細くする。目標としては分かりやすいのですが、その数字に届いたあと何が待っているのかは、たいてい描かれていません。

目標は数字にしなさい、とよく言われます。測れるから、進んだかどうかが分かる。それは正しい。ただ、測れることと、続けたくなることは別の話です。体重が落ちたところで、暮らしが自動的に変わるわけではありません。数字が変わっただけです。

そうすると、毎日ゼロから理由を作り直すことになります。今日も我慢する理由は何だったか。それを思い出せない日が、必ず来ます。

続く人は、そこが違います。痩せたあとの自分が、すでに見えている。今まで着られなかった服を着て出かけている場面。久しぶりに会った人から、何か言われる場面。年を取っても自分の足で歩いて、笑って過ごしている場面。数字ではなく、場面を持っているのです。

ラーメン屋で、私が負けかけた話

先日、友人と食事に行きました。

席につくなり、友人は迷うことなくチャーシューライスとラーメンを頼みました。炭水化物のオンパレードやなぁと、他人事ながら思いました。そして、そう思いながら、同じものを頼みたい欲求と戦っていました。

頭の中には、理由が次々と並びます。せっかく友人と来ているのだから、付き合いで食べてもいいのではないか。一日くらい食べても大丈夫ではないか。来月からちゃんとやるのだから、今日はいいのではないか。

どれも、もっともらしく聞こえます。情けない話ですが、その数十秒のあいだ、私は本気で迷っていました。目の前の一杯と、自分で決めたはずのことを、天秤にかけていたのです。

そして一度でも自分に許可を出すと、歯止めは効かなくなります。これは意志が弱いという話ではありません。誰でもそうなります。

あとで振り返って、気づいたことがあります。あのとき私の頭にあったのは、体重の数字だけでした。数字と、目の前に置かれたラーメンを比べたら、勝つのはラーメンです。においも湯気も、目の前にあります。数字には、においも湯気もありません。

数字は弱く、場面は強い

数字は頭の中の記号です。記号は、五感に勝てません。目の前の食べ物、椅子の座り心地、布団の暖かさ。そういうものと張り合うには、こちらも具体的でなければ届きません。だから、場面を持つのです。

場面は、細かいほど強くなります。着たい服があるなら、その色まで思い出す。誰かに何か言われる場面なら、その人の顔まで浮かべる。歩いている自分を思うなら、どこを歩いているのかまで決める。細かくしておくと、迷った瞬間に出てきます。数字は出てきませんが、場面は出てきます。

住まいの相談で私が最初に聞くのも、似たところがあります。これまでで居心地が良かった場所はどこですか、という質問です。返ってくるのは広さや新しさではなく、そこに誰がいたかという場面です。人が本当に動くのは、条件ではなく場面のほうなのだと、現場で何度も見てきました。

ここで大事なのは、その場面が自分にとって本当に嬉しいものかどうかです。

誰かに勝つため、恥ずかしい思いをしないため。そういう理由でも人は動きますが、長くは続きません。痛みを避けるために動いている状態は、痛みがなくなった時点で終わるからです。人に言われて始めたことも同じで、言った人がいなくなれば、続ける理由もなくなります。自分の中に場面がないと、外から支えてもらい続けるしかありません。

続くのは、その先が楽しみなときだけです。我慢しているつもりが、近づいているつもりに変わる。やっていることは同じでも、意味がまるで違ってきます。

今日からできることを、ひとつだけ。いま続けたいと思っていることを、ひとつ思い浮かべてください。ダイエットでも、勉強でも、片付けでも構いません。そして、それが続いた先の場面を、ひとつだけ決めてください。

決めるのはひとつで十分です。たくさんあると、どれも薄くなります。書き出さなくてかまいません。頭の中に置いておくだけで届きます。ただし、数字ではなく場面にすること。ここだけは変えないでください。

あなたが続けたいことの先には、どんな場面がありますか。
それは、数字で言い表せるものでしょうか。

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投稿者プロフィール

小橋広市
小橋広市
武蔵野美術大学卒業後、東京の建築デザイン事務所に就職。その後、京都で建築士事務所を設立。人の共通心理をとりいれた店舗や狭小住宅の企画設計を生業としていたが、59歳で心筋の半分以上が壊死する重度の心筋梗塞で倒れ、事務所を廃業。紆余曲折を経て住環境ライフコンディショニングコーチとしてリスタート。近年では、企業研修において、それぞれの組織に応じた内容にカスタマイズし提供している。

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