今回は他者に合わせて自分自身を無意識的に使い分けていることを「分人主義」という初めて聞いたような言葉でお伝えしてみたいと思います。

日常生活の中で、私たちはさまざまな役割を無意識的に演じています。
例えば、朝、家族のために朝食を作る親としてのあなた。
職場でプロフェッショナルな一面を見せるあなた。
友人たちとの食事会では笑顔で楽しい時間を共有するあなた。

これらの例からわかるように、あなたは一日の中で様々な「自分」を表現しています。それら全てがあなた自身であり、状況や人によって異なる面を前面に出すことで、適応的に行動することができています。

これらのほとんどが、私たちの多様性を反映しています。その多様性には、私たちの内面が影響を及ぼしています。この多様性の考え方は、「分人主義(ディビジュアリズム)」と呼ばれ、社会学や人類学の分野でよく議論されているそうです。

分人主義は、一人ひとりが異なるアイデンティティや役割を持ち、それぞれの状況に適応しながら多面的な自己を表現することを指しているようです。例えば、あなたが家族と過ごす時間は、子供たちのために料理を作り、笑顔でコミュニケーションを取り温かくて思いやりのある一面を見せています。

一方、職場ではプロフェッショナルなあなたが姿を現します。仕事に集中し、同僚と協力して目標に向かっている凛々しいあなた。
そして、友人たちとのディナーでは、リラックスした笑顔で会話を楽しみ、自分のプライベートなエピソードを共有することで、友情を深めていく別の一面で輝いています。

これらの異なるシーンでの自己の表現は、あなたの無意識的なコミュニケーションスキルであり柔軟性と適応力の証かもしれません。それぞれのシーンであなたと話した相手は、それぞれの印象を抱いています。スタイリッシュで凛々しいと感じている職場の同僚はあなたをバリキャラと思っているかもしれません。そんな職場の同僚が家庭的なあなたを垣間見た時、新鮮な意外性を感じるでしょう。

このような分人主義は、意識的にいくつもの顔を使い分けているわけではなく、あなたがその状況に合わせて自然体でいるのが特徴です。この多面性は、あなたが持つ強みでもあり魅力でもあります。異なる状況や人々との関わり方を理解し、適切にコミュニケーションをとる能力は、あなたの人間関係を豊かにしているはずです。

そんな中でもあなたの内面の「自我」は一貫して存在しています。それはあなたの価値観や信念、特性などによって形成され、あなたがあなたらしくいられる基盤になっています。このように、私たちは状況や相手によって変化する一方で、無意識的に自己を保持し続ける能力を持っています。

もちろん、人格同士がリンクされていない多重人格とは違い、相手やシチュエーションに合わせたコミュニケーションを取るために変化し、その全てが自分の中でリンクされています。では本当の自分自身はどんな人?と疑問を持つかもしれません。一人になった時が本当の自分だよと答えを出す前に少し深掘りしてみましょう。

一人になった自分は、自分自身とコミュニケーションを取り自分に合わせた自分になっているので、その時の状況や深く関わっている人間関係によって変化しているはずです。複雑に絡み合う人間関係の中で、あなたの価値観や信念、特性のバランスが崩れた時に、運命に逆らいたくなったり人間関係から逃げたくなったりします。

このような自我のバランス保つことは人間関係を深め、新たな経験を通じて成長するための重要なスキルと言えます。分人主義がもたらす自己の多様性は、私たちの人生に様々な魅力的な体験をさせてくれます。自分自身の中に秘められた多面性を見つめ直し、新たな可能性を探求してみるのも人間関係が楽しくなるきっかけになるかもしれません。

もしも人間関係に疲れた時は、他者を無視したニュートラルなあなた自身を発見しておいて下さい。私たちでそのお手伝いをさせて下さいね。

投稿者プロフィール

小橋広市
小橋広市
武蔵野美術大学卒業後、東京の建築デザイン事務所に就職。その後、京都で建築士事務所を設立。人の共通心理をとりいれた店舗や狭小住宅の企画設計を生業としていたが、59歳で心筋の半分以上が壊死する重度の心筋梗塞で倒れ、事務所を廃業。紆余曲折を経て住環境ライフコンディショニングコーチとしてリスタート。近年では、企業研修において、それぞれの組織に応じた内容にカスタマイズし提供している。

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