前編では、夫婦喧嘩の多くが「目に見えない不満や誤解」の積み重ねで起こること、そしてそれを避ける方法として「観えない気持ちに気づくこと」の大切さをお伝えしました。
今回はさらに一歩進めて、「感情的なすれ違いが起きる本当の理由」についてお伝えします。
感情がすれ違う背景にあるもの
双方が感情的になる背景には、図のような「認知と行動のブラインドループ」というコミュニケーションループがあります。
一見シンプルなループですが、実はコミュニケーションを難しくする2つの「ブラックボックス」が隠れています。それは「自分の行動」と「相手の認知」
「相手の認知」が分かりにくいのは当然でしょう。相手がどう感じ取ったかは、本人にしか分かりません。しかし「自分の行動」が分かりにくいというのは少し意外かもしれません。例えば、パートナーにイラッとして言い返した瞬間、自分の表情や声のトーンを覚えていますか? 多くの人は客観的になる余裕がないはずです。
実際には「そんなつもりじゃなかった」のに、相手からは「責められている」と感じられることがよくあります。これは、自分自身の「見えない行動」が原因のひとつになっています。
すれ違いを理解する「メラビアンの法則」
「メラビアンの法則」というのをご存知でしょうか。人は「何を言ったか」よりも、「どんな声で」「どんな表情で」伝えたかに大きく影響を受けます。例えば、相手から体調を聞かれ、あなたが「大丈夫」と言ったとしても、険しい表情や冷たい声だと、相手はよけい心配したり不安感を覚えてしまいます。
- 言葉の内容:7%
- 声のトーンや話し方:38%
- 表情やしぐさなどの見た目:55%
つまり、夫婦間のコミュニケーションでは「何を言ったか」以上に、「どう伝わったか」が大切です。では、具体的に何を意識すればよいのでしょうか。すぐに実践できるポイントを3つ紹介します。
・話す前に深呼吸をして表情をやわらげる → 言葉にネガティブな感情を乗せないようにコントロール
・相手の反応を見ながら、ゆっくり穏やかに話す →「どう伝わるか」を意識した話し方を心がける
・会話の後、「自分がどう見えたか」を振り返る → 態度やトーンを客観視する習慣を身につける
人間関係のトラブルは、「言った・言わない」よりも、「どう伝わったか」に問題があることが多く。「そんなつもりじゃなかった」が通じない瞬間は誰にでもあります。だからこそ、自分の表情や行動を少しだけ意識するだけで、コミュニケーションの質が劇的に向上します。
自分の表情や声のトーンを意識することで、感情のすれ違いを防ぎ、夫婦の関係をより良いものに変える大きな一歩になるはずです。次の喧嘩の前に、ぜひこのことを思い出してみてください。
前編と後編と最後まで読んで下さり、ありがとうございました。ご質問やあなたのエピソードがあったらコラムにコメントを下さいね。
あとがき
以前、あるワークショップに参加されたご夫婦がとても印象的でした。お二人は結婚して20年以上。一見とても穏やかで仲が良さそうでしたが、実は「言わないことによる誤解」に悩んでいたそうです。セッション中、ご主人が奥様に「いつも機嫌が悪そうに見える」と打ち明けると、奥様は「全然そんなつもりなかった。ただ疲れていただけよ」とぽつり。たったそれだけのやり取りで緊張が解け、お互いに笑顔がこぼれました。
言葉にならない「見え方」の違いに気づくこと。これが関係性をやさしくほぐす鍵になると改めて感じた瞬間でした。
投稿者プロフィール

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武蔵野美術大学卒業後、東京の建築デザイン事務所に就職。その後、京都で建築士事務所を設立。人の共通心理をとりいれた店舗や狭小住宅の企画設計を生業としていたが、59歳で心筋の半分以上が壊死する重度の心筋梗塞で倒れ、事務所を廃業。紆余曲折を経て住環境ライフコンディショニングコーチとしてリスタート。近年では、企業研修において、それぞれの組織に応じた内容にカスタマイズし提供している。
マイベストプロ
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