無理に自分を役割や環境に合わせようとしていると、居場所がないと感じることがあります。昔、新しい職場に移ったばかりのときに、その感覚に襲われました。新しい環境や人間関係、業務内容に適応する中で、周囲の人たちは皆、互いに知り合い、すでに関係性を築いていましたが、私はその輪の外にいるような気がしていました。
孤立感の中で感じたこと
初めての打合せ会議で、皆が楽しそうに意見を交わしていました。しかし、私は発言のタイミングをつかめず、ただ座っているだけでした。自分だけが周囲に馴染めず、会話に加わることができない孤立感は、自分が周囲から見えていないような感覚を引き起こしました。何かを発言しても、その言葉が空回りしているように感じ、誰も私の声に耳を傾けていないと思えてしまったのです。そこには安心感も、つながりも、居場所の気配もありませんでした。
その孤独感は昼休みの時間にも続きました。皆が食事を共にしながら笑顔で話している中、私は一人で机に向かい、時間を持て余していました。周囲の笑顔を見るたびに、孤独感がより一層強まりました。周囲の楽しげな会話の声が聞こえる中、まるで自分だけが違う場所にいるようで、透明人間になったような気分でした。「ここにいる自分はなんて場違いなんだろう」と自己否定的な思いが募り、心に重くのしかかっていました。
小さなつながりの大切さ
そのとき何があればもっと安心できたのでしょうか。今振り返ってみると、ほんの小さな「つながり」があれば、きっと違っていたはずです。例えば、誰かが気軽に声をかけてくれること。些細な一言、「今日はどう?」や「何か困ったことはない?」といった気遣いの言葉があれば、それだけで心の負担は軽減されたと思います。また、自分自身ももっと勇気を出して周囲に話しかけたり、考えを伝えたりしていれば、状況は少しずつ変わっていたかもしれません。
人間関係を築くには時間と努力が必要ですが、最初の一歩を踏み出す難しさは、私自身も深く痛感しました。私は転職直後の職場で居場所を感じられなかった経験を通じて、「つながり」を持つことの大切さを学びました。誰かが手を差し伸べてくれること、また自分から手を伸ばすことで、少しずつ自分の居場所を築くことができるのだと気付かされました。
居場所をつくるために
居場所がないと感じるとき、それは自分が周囲にとって無価値な存在だと思いがちです。しかし、その考えは一時的であり、環境や自分の変化によって変わります。「つながり」を築くことは、他人に依存するのではなく、自分の心を開いて相手と向き合うことから始まります。そして、小さなつながりが積み重なることで、少しずつ安心できる場所が生まれます。
今では、あのときの経験を通じて、他人が居場所を見つけられるよう手助けしたいという気持ちが強くなりました。例えば、新しい職場で不安そうにしている同僚に積極的に声をかけたり、相談に乗ったりしています。誰かが孤独を感じているとき、ほんの一言でも気軽に声をかけること。それだけで、その人の心に少しでも安心感を与えられるのではないでしょうか。そして、それが自分の「居場所」をつくることにもつながっていくはずです。
【小さな実践】
明日から、小さな「つながり」をつくるために、周囲の誰かに声をかけてみましょう。「おはようございます」「今日はどう?」など、ほんの一言で構いません。その一言が、あなた自身と相手にとっての新しいつながりの始まりになるかもしれません。そして、自分自身も相手の話に耳を傾け、一歩踏み出してみることを大切にしてみてください。
投稿者プロフィール
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武蔵野美術大学卒業後、東京の建築デザイン事務所に就職。その後、京都で建築士事務所を設立。人の共通心理をとりいれた店舗や狭小住宅の企画設計を生業としていたが、59歳で心筋の半分以上が壊死する重度の心筋梗塞で倒れ、事務所を廃業。紆余曲折を経て住環境ライフコンディショニングコーチとしてリスタート。近年では、企業研修において、それぞれの組織に応じた内容にカスタマイズし提供している。
マイベストプロ
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