「どうしてまた、こんな言い方をしてしまったのだろう」
そんなふうに、自分の会話のクセに気づいて恥ずかしくなったり、自己嫌悪を感じたりすることはありませんか。けれど、言葉は変えられます。そして、言葉が変わると、思考も行動も、少しずつやわらかくなっていくものです。誰かとの対話の中で、あるいは自分自身との内なる会話の中で、私たちが選ぶ“ひと言”が、未来の心の風景をつくっているのかもしれません。

会話に潜むクセとその影響
以前このコラムでは、会話における「クセ」について取り上げました。例えば、何気ない一言が習慣的な言い回しになっていて、自分でも気づかないうちに繰り返している──そんなことに心当たりはありませんか?
私自身、最近またそのクセの根強さを痛感する出来事がありました。気をつけているつもりでもなかなか直りません。相手と話している最中にふと我に返って、「また同じ言い回しをしてしまった」と気づくこと。これは誰しも経験のあることではないでしょうか。
意識して変えようとすればするほど、言葉がうまく出てこなかったり、噛んでしまったり、かえって不自然になってしまうこともあります。それほどまでに、会話のクセは私たちの深層に根づいています。
また、以前もお伝えしたように、私たちの言葉には「省略」「歪曲」「一般化」といったパターンが無意識のうちに含まれています。これらは、誤解や行き違いなど、ミスコミュニケーションの原因となりがちです。そして、特に注意したいのが、自分や相手をネガティブな方向に導いてしまう「言葉の選び方」です。
ネガティブな言葉の具体例
こうした言葉のクセは、日常の会話の中に自然に表れます。例えば、次のような言い方を耳にしたことはないでしょうか。
- 「事故をしないようにね」
- 「私は優柔不断です」
- 「気が短くて困っています」
- 「いつも忙しくて大変です」
どれもごく日常的な表現で、悪気があるわけではありませんが、聞く側の心にはネガティブなイメージが残っているかもしれません。
言い換えによるポジティブな転換
そんなときこそ、以下のように少しだけ言葉の選び方を変えてみると、印象も気持ちも大きく変わってきます。
- 「安全運転でね」
- 「慎重に考える方ですね」
- 「すぐに行動できるのは強みですよ」
- 「充実した日が続いています」
このように、ポジティブな言い換えを意識することで、心の動きに穏やかな変化が生まれます。発する言葉が変わると、それに応じた思考が生まれ、行動にも自然と軽さが出てくるものです。
視点を変えることで見えてくるもの
私たちは、自分では「短所」だと思っていることでも、他者から見れば魅力や強みに映ることが多くあります。つまり、物事の見方を少し変えるだけで、その意味合いはまったく違うものになります。
そして、言葉は「思考のカタチ」として現れ、やがては「行動」へとつながっていきます。それが、日々の選択や人との関わりに、少しずつ影響を与えています。どんな言葉で世界を見つめ、どんな言葉で自分を語るのか。その選択が、よりよい変化の第一歩となるはずです。
小さな実践:短所を長所に変換してみる
あなたが「自分の短所だ」と感じていることを、ひとつ書き出してみる。 そしてそれを、ポジティブな視点から見た「長所の言い換え」に変えてみてください。(例:優柔不断 → 慎重である)言葉を変えることは、思考を変えるためのやさしい入り口。 自分自身に向けるそのひと言を、少しだけ丁寧に選んでみませんか。
投稿者プロフィール

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武蔵野美術大学卒業後、東京の建築デザイン事務所に就職。その後、京都で建築士事務所を設立。人の共通心理をとりいれた店舗や狭小住宅の企画設計を生業としていたが、59歳で心筋の半分以上が壊死する重度の心筋梗塞で倒れ、事務所を廃業。紆余曲折を経て住環境ライフコンディショニングコーチとしてリスタート。近年では、企業研修において、それぞれの組織に応じた内容にカスタマイズし提供している。
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