なぜだか分かりませんが、話しやすい人がいます。不思議と、自然に心を開ける人がいます。自分のことを少し話すだけで、相手との関係性に変化が起きる。今回はそんな経験をもとに、「心の窓」が開く瞬間についてお伝えします。

自分自身に気づく
「自分のことは、自分が一番よくわかっている」そう思っていた時期がありました。けれど、自己啓発の本や心理学を学ぶうちに、本当は「自分のことこそ見えていない」部分が多いのだと気づきました。私にも、たくさんのブロックや劣等感がありました。何気ない日常の会話の中にもそれは現れ、家庭環境や学歴といった過去の背景にも、深く根を張っていたように思います。
若い頃には気にしていなかった容姿。年齢とともに変化していった体型や髪の量。ある日、誰かが何気なく口にした「ハゲ」や「デブ」という言葉に、驚くほど敏感になっている自分に気づき、恥ずかしさと自己嫌悪が入り混じるような感覚を覚えました。今思えば、それは私自身の劣等感を、無意識のうちに他人に投影していたのだと思います。
自己開示がもたらす変化
そんな私に変化が訪れたのは、数年前のことでした。きっかけは、パートナーの考え方に触れるようになった頃のこと。彼女が、ありのままを受け入れる姿勢や、自分の弱さを否定しない態度に影響を受け、私の中で、少しずつ「自分で自分を責める気持ち」がほどけていきました。劣等感を隠すよりも、それを話せるようになったときの安心感や、心の緊張がほぐれる感覚。それは、思っていた以上に大きな変化でした。
自分の中の小さな秘密を少しだけ打ち明けると、相手がそれを受け止めてくれる。むしろ、打ち明けたことで相手の表情がやわらぎ、こちらにも心を開いてくれる。それが、「自己開示」のもたらす力だと感じました。
心理学に学ぶ「ジョハリの窓」
この体験を通して、私が後に出会った心理学の考え方に、深く納得したことがあります。それは「ジョハリの窓」という考え方があります。私たちの心の中には、次のような領域があるとされています。
- 自分も他人も知っている「開かれた部分」
- 自分だけが知っている「秘密の部分」
- 他人は気づいているが自分では気づいていない「盲点」
- 自分にも他人にも知られていない「未知の部分」
この「秘密の部分」――つまり自分の中だけにしまっていたことを、ほんの少しでも誰かに打ち明けてみると、その部分が「開かれた部分」へと変化していきます。つまり、秘密を打ち明けることで、心が軽くなり、人間関係も深まっていく、ということです。もちろん、何もかもを話す必要はありません。けれど、「ちょっとした本音」や「実はね」と添えて打ち明けるだけでも、相手との信頼関係にあたたかい変化が生まれます。
私たちは、人との関わり合う中で、自分の輪郭を確認しながら関係性を構築しています。もし今、誰かとの心の距離を縮めたいと感じているなら、まずは自分から“心の窓”をそっと開いてみる勇気。その一歩が、相手の心にも優しく扉を開かせることになるかもしれませんね。
投稿者プロフィール

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武蔵野美術大学卒業後、東京の建築デザイン事務所に就職。その後、京都で建築士事務所を設立。人の共通心理をとりいれた店舗や狭小住宅の企画設計を生業としていたが、59歳で心筋の半分以上が壊死する重度の心筋梗塞で倒れ、事務所を廃業。紆余曲折を経て住環境ライフコンディショニングコーチとしてリスタート。近年では、企業研修において、それぞれの組織に応じた内容にカスタマイズし提供している。
マイベストプロ
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