住環境シリーズ 第6回

居心地のいい住まいには、「動線」「配色(家具を含む)」「遊び心」の3つの共通点があります。設計の現場で変えてきた扉の数と家具の高さ、縁側の話をもとに、建て替えなくても今の家でできる見直し方をお伝えします。

広いはずなのに、なぜか落ち着かない部屋。
家具も揃っていて、片付いてもいるのに、長くいると疲れてくる。
そんな部屋に心当たりはないでしょうか。

外光が入る窓辺に、籐の椅子とガラスのテーブルが置かれた明るい部屋

建築家として仕事をしてきた中で、居心地のいい住まいには共通点があると感じてきました。広さや新しさとは別のところにあります。

1つ目は、動線

家は、毎日いちばん長く動いている人に合わせて考えます。住まいでは、それは主婦であることが多いです。料理、洗濯、掃除と、一日じゅう家の中を行き来しています。

私が間取りを考えるときは、その移動距離と時間をできるだけ縮めて、毎日の負担を減らすことを考えてきました。大きな工夫をするというより、足の運びを一つずつ楽にしていく作業です。

住宅にはスペースの限りがあるので、ぐるりと一周できる間取りにするのは、なかなか難しいものです。それでも、なるべく扉を付けずに通り抜けられる形が理想だと思っています。行き止まりのない流れがあると、そこで引き返す手間がなくなります。

扉が一枚あるだけで、手がふさがっていれば足で開けるか、一度置いてから開けることになります。一日に何十回も通る場所なら、その一枚の差は小さくありません。

2つ目は、配色と家具

色の話は、少し専門的です。目に入る壁や床や家具が、どれくらい光を跳ね返しているかを表したものを、反射率といいます。日本人の肌の反射率は50%が基準と言われています。これを超える反射率の部屋に長くいると、落ち着きがなくなるというデータがあります。数字はあくまで一般的なもので、個人差はあります。

街のビルは、外壁の金属やガラスが外光を強く跳ね返すので、歩いていて落ち着きません。自然の中は、歩いているだけで癒やされます。美容院のような店は、あえて反射率の高い素材で非日常のシャープさを出しています。長い時間を過ごす住まいは逆で、反射率を50%前後に抑えると、和室のような寛げる空間になります。

最近は洋室が多く、壁に白っぽい素材を使うので、どうしても50%を超えます。そのぶんを家具で抑えることができます。ただし抑えすぎると暗くなるので、照明で補います。建築家として仕事をしていた頃は、昼間なら時間とともに移り変わるステンドグラスで、壁や床に映り込みを入れて、バランスをとることもありました。

家具で変えられるのは、色だけではありません。高さも変わります。

高さのある家具が並ぶと、部屋に圧迫感が出ます。できるだけ低めの家具を揃えると、同じ広さでも部屋が広々と感じられて、圧迫感がなくなります。今はタンスや洋服ダンスをクローゼットに収められる家が増えたので、背の高い家具はそもそも置く必要がありません。地震のときには倒れてくるおそれもあります。高くても腰の高さまでが目安だと考えています。

高さで言えば、システムキッチンも同じです。作業台の高さは、使う人の身長によって大きく違ってきます。少し合わないだけで、腰を痛める原因になることがあります。だから私は、なるべく身長に合わせた高さを選んできました。

3つ目は、遊び心

3つのうち、これだけは贅沢と言ってもいいかもしれません。なくても暮らしていけますが、あると家が好きになります。

ご家族から、昔の家には縁側があったという話を聞いたことがあります。私の実家にも縁側がありました。外と中の境目がなくて、友達が来ても靴を脱がずに座って話ができる、とても過ごしやすい場所でした。そこで、ローデッキの縁側を作りました。予算があるときには、縁側風のサンルームにしたこともあります。

縁側は、新築でもリフォームでも作りました。外と中が、壁や窓でぱきっと分かれるのではなく、ゆるやかにつながっている。その境目のあいまいさが、居心地につながるのだと思います。

動線や配色は、考えれば誰でも整えられます。遊び心は、そこに暮らす人の記憶から出てくるものでした。

今の家で、確かめてみてください

建て替える必要はありません。次の3つは、今日から試せます。

まず、目を細めて部屋全体を見渡してみてください。焦点をぼかすと、白っぽすぎるところや、暗すぎるところがおおよそ分かります。「簡単反射率バランス測定」と私は呼んでいます。

次に、背の高い家具を一つだけ、腰の高さのものに替えられないか考えてみてください。難しければ、その上に置いているものを下ろすだけでも違います。

最後に、家の中で一日に何度も開け閉めしている扉が、どこにあるか数えてみてください。

あなたの家で、いちばん圧迫感のある場所はどこでしょうか。

それは、動線と配色と遊び心のどれと関係しているでしょうか。

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投稿者プロフィール

小橋広市
小橋広市
武蔵野美術大学卒業後、東京の建築デザイン事務所に就職。その後、京都で建築士事務所を設立。人の共通心理をとりいれた店舗や狭小住宅の企画設計を生業としていたが、59歳で心筋の半分以上が壊死する重度の心筋梗塞で倒れ、事務所を廃業。紆余曲折を経て住環境ライフコンディショニングコーチとしてリスタート。近年では、企業研修において、それぞれの組織に応じた内容にカスタマイズし提供している。

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