「この人とは、どうも話が噛み合わない」と感じた経験はありませんか。職場の会議や打ち合わせ、家庭内や友人との会話などで、相手の話は理解できるし、自分も間違ったことを言っていないはずなのに、なぜか話が進まない――。実はこのような状況は、単なる意見の違いではなく、互いの「思考の出発点」そのものが違うことから起きています。

噛み合わない理由は「思考スタイル」の違い
先日、ある展示会の企画会議で、AさんとBさんが意見の食い違いに悩まされていました。Aさんは「今年の展示会をより魅力的にするための構成」を中心に話を進めたいと考え、一方のBさんは「昨年の問題点や反省を整理し、それを踏まえた上で計画を立てるべきだ」と主張しました。
このような対立が起こる背景には、「目的志向型」と「問題回避型」という異なる思考パターンがあります。
「目的志向型」と「問題回避型」の特徴
目的志向型の人は、まず理想や目標を明確に描き、そこから逆算して物事を考える傾向があります。「目的がはっきりしないと問題が見えにくい」という考え方。一方、問題回避型の人は、過去の失敗やリスクを最初に確認し、それらを避けるように行動計画を立てます。「リスクを先に確認しないと、目的そのものがずれてしまう」というのがこのタイプの特徴です。
両者を比較すると、次のような違いがあります。
- 目的志向型:未来の理想や目標を重視し、前向きな提案をする
(例:「新しい取り組みを試したい」「目標に合った計画を立てよう」)
- 問題回避型:過去の問題やリスクを避けることを重視する
(例:「去年のようなトラブルを避けたい」「問題の原因を先に洗い出そう」)
このどちらにも価値があり、優劣はありません。しかし、この違いに気づかないまま話を進めると、ストレスやイライラが溜まり、チームや関係の雰囲気が悪くなってしまいます。
日常や職場でよくある「ズレ」の例
こうしたズレは職場だけでなく、日常生活でも頻繁に起きています。例えば、問題回避型の人に「理想の未来をイメージしましょう」と提案しても、「問題点を整理してから考えたい」と返されることがあります。
逆に、目的志向型の人に「まず問題点を明らかにしましょう」と話を振ると、「それよりもうまくいく方法を話し合いたい」と感じられることもあります。このようなズレは、能力不足や話し方の問題ではなく、「相手がどこから話を始めたいのか」を見逃しているだけなのです。
違いを尊重し、気づく力を高める
ズレを解消するためには、まず相手のタイプを見極めるための「気づく力」を育てることです。また、自分が話をリードする場合でも、相手の思考パターンに寄り添う柔軟さが必要です。
私たちはつい自分の話しやすい方向へ会話を進めがちですが、良好な関係を築くためには、相手が話しやすいスタート地点に合わせることも大切なので、会話の途中でも「この人は目標を重視しているか、それともリスクを避けたいのか」を想像することも、相手との距離を縮めるきっかけになります。
今日からできる小さな実践
会議や打ち合わせでは、相手の言葉を注意深く聞き、「この人は目的型か問題型か」を意識してみましょう。目的型の人には「どんなゴールを目指していますか?」、問題型の人には「特に避けたいことは何でしょうか?」と問いかけてみるだけで、会話の流れがスムーズになり、関係性が良くなることを実感できるはずです。ぜひ、小さな一歩を踏み出してみてください。
投稿者プロフィール

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武蔵野美術大学卒業後、東京の建築デザイン事務所に就職。その後、京都で建築士事務所を設立。人の共通心理をとりいれた店舗や狭小住宅の企画設計を生業としていたが、59歳で心筋の半分以上が壊死する重度の心筋梗塞で倒れ、事務所を廃業。紆余曲折を経て住環境ライフコンディショニングコーチとしてリスタート。近年では、企業研修において、それぞれの組織に応じた内容にカスタマイズし提供している。
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