SNSは、私たちの生活にすっかり溶け込んでいます。家族や友人とのつながりを深めたり、共通の趣味を持つ人と交流したり、最新のニュースを知る手段としても活用されています。でも、その一方で、SNSを通じて人間関係に悩んでしまう人も少なくありません。

例えば、SNS上で自分と同じ考えを持つ人ばかりをフォローしていると、似たような意見に囲まれることになります。これ自体は安心できる環境かもしれませんが、いつの間にか「自分の考えこそが正しい」と思い込みやすくなってしまうことがあります。そして、自分と違う意見を目にしたときに強く反発してしまったり、逆に自分の意見が否定されたと感じて落ち込んでしまったりすることもあります。このように、同じ価値観の人たちが集まることで視野が狭くなる現象を「エコーチェンバー現象」といいます。

SNS上で誹謗中傷に巻き込まれたAさんのケース

私が以前コーチングを行ったAさんも、SNSの人間関係に悩んでいました。彼女は趣味のグループに所属し、同じ価値観を持つ人たちと楽しく交流していました。しかし、新しく加わったBさんが少し違った意見を投稿したことで、一部のメンバーがBさんを批判し始めました。Aさんは「違う意見があってもいいのでは?」とBさんをかばいましたが、今度は彼女自身が攻撃の対象になってしまったのです。

Aさんは大きなショックを受け、「なぜこんなことになったのだろう」と悩んでいました。もともと安心できる場だったはずのSNSが、一瞬にして苦しい場所に変わってしまったのです。

SNSとの向き合い方を見直す

Aさんとのコーチングでは、まず「普段どのようにSNSを使っているか」を振り返ることから始めました。そして、次のようなポイントについて一緒に考えました。

偏った情報ばかり集めていなかったか?
SNSは自分の興味に合った情報が集まりやすいため、気づかないうちに同じ価値観の人たちだけと交流しがちです。Aさんも、自分にとって心地よい情報ばかりを選んでいたことに気づきました。その結果、違う意見を持つ人が現れたときに、周りが受け入れられず、攻撃的な雰囲気になってしまったのです。

違う考えに触れたとき、すぐに否定していないか?
異なる意見に出会ったときに「そんな考え方はおかしい!」と感じたら、一度立ち止まって考えてみることも大切です。「なぜ自分はそう感じたのだろう?」「相手はどういう背景でその考えを持ったのだろう?」と視点を広げることで、感情的にならずに冷静に対話できるようになります。

③ SNSに費やす時間を見直してみる
SNSの世界にどっぷり浸かると、そこでのやりとりが現実のすべてのように感じてしまうことがあります。Aさんとも、SNSを使う時間を決めたり、他の趣味やリアルな交流を大切にしたりすることで、SNSに振り回されないようにする方法を話し合いました。

SNSをもっと前向きに活用するために

Aさんは、これらのことを意識しながらSNSを使うようになったことで、以前より気持ちが楽になりました。異なる意見に出会っても、すぐに否定するのではなく「こういう考え方もあるのか」と受け止められるようになりました。また、SNSの時間をコントロールすることで、より健全な距離感を持てるようになったのです。

では、私たちもSNSを前向きに活用するために、何ができるでしょうか?

いろいろな視点に触れる
一つの情報源やグループに偏らず、違う立場の人の意見にも目を向けてみる。そうすることで、視野が広がり、より柔軟な考え方ができるようになります。

感情的な投稿をする前に深呼吸
腹が立つ投稿を見たときや、何か言い返したくなったときは、一度立ち止まって「本当にこの投稿をして大丈夫か?」と考えてみる習慣をつける。

SNSに振り回されすぎないようにする
SNSは便利ですが、それが全てではありません。ときにはスマホを置いて、家族や友人と直接話したり、趣味の時間を楽しんだりすることも大切です。

SNSは、使い方次第で人生を豊かにもできるし、逆にストレスの原因にもなります。だからこそ、私たち一人ひとりが冷静に、自分にとって心地よい使い方を見つけていくことが大切です。他者を尊重しながら、穏やかで前向きなSNSライフを楽しんでいきましょう。

投稿者プロフィール

小橋広市
小橋広市
武蔵野美術大学卒業後、東京の建築デザイン事務所に就職。その後、京都で建築士事務所を設立。人の共通心理をとりいれた店舗や狭小住宅の企画設計を生業としていたが、59歳で心筋の半分以上が壊死する重度の心筋梗塞で倒れ、事務所を廃業。紆余曲折を経て住環境ライフコンディショニングコーチとしてリスタート。近年では、企業研修において、それぞれの組織に応じた内容にカスタマイズし提供している。

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