ステンドグラス体験教室で見えた関係性

以前、小学校でステンドグラスの体験教室を行ったときのこと。午前と午後の二部制で実施したのですが、同じ内容の体験教室でありながら、子どもたちの関わり方に思いがけない違いを見ました。

創作・クラフト系イベント

午前中の教室では、色や形の違うガラスをいくつかのトレーに入れ、子どもたちが自由に選べるようにしていました。一見、楽しそうな環境です。ところが時間が進むにつれて、「好きな色がなくなった」「さっき取ろうと思っていたのに」「交換してくれない」といった理由で、泣き出す子や怒りを表す子が出てきました。教室の空気も、どこか張りつめたものになっていったのです。

そこで午後の教室では、方法を変えてみました。ガラスの材料をあらかじめキットにし、一人ひとりに手渡したのです。選べる自由は減りましたが、「これはあなたのもの」という形を明確にしました。

すると、驚くような変化が起こりました。
色の種類が少ない友だちに自分のガラスを分けてあげる子が現れたり、「この色、使わないから交換しよう」と声をかける子が出てきたりしたのです。誰かに言われたわけでも、ルールで決めたわけでもありません。子どもたち自身が、自然に助け合いを始めたのです。

この違いは、どこから生まれたのでしょうか。
午前中のトレーの材料は、みんなが自由に取れる「共有物」であり、まだ誰のものでもありませんでした。だからこそ、自分の欲しい色が手に入らないと「奪われた」という感覚が生まれやすく、感情的な反応につながったと考えられます。一方、午後のキットは、最初から「自分の所有物」でした。一度、自分のものとして受け取ることで、心に余裕が生まれ、周囲の友だちの様子に目が向いたのでしょう。

これは、幼いながらも子どもたちが体感していた「相互依存」の関係です。相互依存とは、お互いが自立したうえで、違いを認め合い、必要なときに支え合える関係です。無理に合わせるわけでも、誰かに依存しきるわけでもありません。それぞれが自分の立ち位置を持ったまま、同じ方向を向いて関われる状態です。

子どもたちは感情に素直です。だからこそ、余裕が生まれた瞬間、自然と人に手を差し伸べる行動が表れます。ところが大人になるにつれて、私たちは環境や立場、過去の経験、世間体といったものを意識するようになります。「どう思われるだろう」「損をしないだろうか」と考えること自体は、社会で生きる知恵でもありますが、その積み重ねが、関係性を不自然な形へと歪めてしまうことがあります。

その代表的な状態が「共依存」です。共依存は、一見すると「助け合い」や「愛情」に見えることがあります。しかし実際には、相手を支えることで自分の存在価値を保とうとしたり、相手を支配することで安心しようとしたりする関係で、そこには対等さがなく、いつの間にか互いを見失ってしまいます。

相互依存と共依存の違いは、「自分が自分でいられているか」という一点に集約されると、私は考えています。自分の感情や考えを大切にしながら相手と関われているか。それとも、不安や恐れから相手にしがみついたり、コントロールしようとしていないか。その違いです。

この視点は、ビジネスの場にもそのまま当てはまります。よく自分本位の状態を「1」とするなら、1と1が組んでも結果は1のままです。どちらも自分の利益だけを見ているからです。一方、相互依存を理解し実践している人を「2」とするなら、2と2が組むことで関係性は4に広がります。互いの強みが掛け合わさり、一人では生み出せなかった価値が生まれます。

人との出会いによって、人生の質は大きく変わります。縁のある人とは時間をかけて信頼関係を育て、急がず無理をせず、自分を保ったまま関われる関係は、結果として長く続き、互いに支え合える関係になります。そして、自分にとって本当に必要なものが見えてくると、人との関わり方も自然と変わり始めるはずです。

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投稿者プロフィール

小橋広市
小橋広市
武蔵野美術大学卒業後、東京の建築デザイン事務所に就職。その後、京都で建築士事務所を設立。人の共通心理をとりいれた店舗や狭小住宅の企画設計を生業としていたが、59歳で心筋の半分以上が壊死する重度の心筋梗塞で倒れ、事務所を廃業。紆余曲折を経て住環境ライフコンディショニングコーチとしてリスタート。近年では、企業研修において、それぞれの組織に応じた内容にカスタマイズし提供している。

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