音羽リハビリテーション病院に転院して数日が経ち、本格的なリハビリが始まりました。手術後の経過観察を終え、集中的に訓練を行うためにこの病院へ移ってきたのです。転院の際は、新しい環境への不安と同時に「ここでしっかり治そう」という決意もありました。

担当の理学療法士の先生も決まり、1日3回40分のリハビリはもはや仕事のようになりました。膝を人工関節に置き換えた後は、安静にしていれば治るわけではなく、「動かすこと」こそが回復への大切な鍵になります。

今でも忘れられないのは、初めてベッドから両足で立ち上がった時の恐怖心です。手術の痛みとはまた違った種類のもので、足が思うように動かず、体を支えるのも精一杯でした。リハビリスタッフに支えられながら数歩歩いた時、「もう元に戻れない」という現実を実感しました。けれど同時に、「ここから新しい歩みを始めるのだ」という小さな希望も芽生えました。

一進一退の訓練

リハビリは一進一退です。膝を曲げる角度を少しずつ広げていく訓練は、想像以上にきつく、汗ばむほどの痛みを伴います。先日は病院の外を500m歩きました。20分ほどかかりましたが、普段なら気にならない凸凹やマンホールの穴が怖いくらい視野に入ってきます。それでも、毎日繰り返す中で、昨日より今日、今日より明日と確かな進歩を感じられる瞬間があります。数センチ足が前に出ただけで嬉しくなり、100度まで曲げられた時には大きな達成感がありました。

歩行測定の体験

いつも気になっていたリハビリ室にある奇妙な機械で歩行の測定をしてもらいました。まだ実験段階だそうですが、このシステムは、3Dセンサに向かって歩くだけで「歩行速度」「歩幅」「胸腰部の上下動」「足の上がり角度」などを数値化し、年齢や性別に応じた基準で点数化します。測定値は「身体の軸」など6つのカテゴリごとに5段階で評価され、「速度年齢」「姿勢年齢」「バランス年齢」から推定歩行年齢が算出される仕組みです。従来のような大がかりな機器や専門的なノウハウは不要で、歩行者に負担をかけずに測定でき、健康づくりの指導にも活用できるとのことでした。

実際に測定してみると、自分の歩行を客観的に見られることが新鮮で、少し緊張しました。まだ実験段階なのですぐに結果は分かりませんが、きっと将来は患者さんとリハビリスタッフが気軽に使えるように改善されるのでしょうね。

自分の足を取り戻す

リハビリ室には同じように術後の訓練に励む患者さんがいます。それぞれに痛みや不安を抱えながらも、リハビリスタッフと互いに声をかけ合い、笑い声が聞こえてくると気持ちが軽くなります。「ひとりじゃない」という感覚が、つらい時間を支えてくれます。

膝の人工関節は「道具」として与えられただけ。そこから本当の意味での「自分の足」にしていくのは、自分自身の努力と日々のリハビリにかかっています。歩くことの当たり前さを、これほど噛みしめる日々はありません。私の場合、一人暮らしなので客観的に歩く様子を見てくれる人がいません。関節の痛みは治っても、痛みを補うために全身の筋肉が無理な使い方をしている癖を、退院予定の9月26日までに修正しておきたい。そんな期待と焦りが入り混じる今日この頃です。

投稿者プロフィール

小橋広市
小橋広市
武蔵野美術大学卒業後、東京の建築デザイン事務所に就職。その後、京都で建築士事務所を設立。人の共通心理をとりいれた店舗や狭小住宅の企画設計を生業としていたが、59歳で心筋の半分以上が壊死する重度の心筋梗塞で倒れ、事務所を廃業。紆余曲折を経て住環境ライフコンディショニングコーチとしてリスタート。近年では、企業研修において、それぞれの組織に応じた内容にカスタマイズし提供している。

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