何をしても上達しない、と感じたことはありませんか。
何かを心に決めて「これを続けよう」と始めたものの、数ヶ月経っても手応えがない。あるいは、最初のうちは面白いほど成果が出ていたのに、ある日を境に、どれだけ努力しても伸びを感じられなくなる。そんな状態です。
こんなに頑張っているのに、まったく上達しない。毎日ブログを書いているのに反応がない。食事制限を続けているのに体重が減らない。こうした経験は、誰にでも一度や二度はあるはずです。私自身も、何度も同じ場所に立ち止まってきました。
それはまるで、階段を上っている途中の「踊り場」にいるような感覚です。前にも後ろにも進んでいないように感じ、景色も変わらない。そのため、先が見えず、不安だけが大きくなっていきます。
この状態に陥ると、人は大きく二つの選択をしがちです。一つは挫折すること。もう一つは、今やっていることを疑い、別の方法を探し始める。しかし、なぜこのような状態が起こるのかを理解していれば、不安に飲み込まれる必要はありません。
最初の成長が早く感じる理由
何かを始めたばかりの頃は、誰でも成長を実感しやすいものです。初めてのことは、できない状態からできる状態への変化が大きいため、成果が目に見えやすいからです。
私がテニスを始めた頃もそうでした。ラケットにボールを当てるだけでも楽しく、ラリーは思いのほか早くできるようになりました。「これなら試合もできるだろう」と軽い気持ちで試合に出てみたのです。ところが現実は甘くありませんでした。サーブを打つたびに、ボールはとんでもない方向へ飛んでいき、いつも一緒にプレーする友人に迷惑をかけてしまう。次第に、サーブは安全なアンダーサーブしか打たなくなりました。
その結果、何年テニスを続けても、サーブだけは初心者のまま。上から打つことに対する苦手意識が、いつの間にかトラウマのように心に根づいていたのです。
止まっているように見える時間
しかし、その間まったく何も起きていなかったわけではありませんでした。試合で友人のサーブを観察し、どういう動きをしているのかを無意識に見ていました。誰にも見られないところで、壁打ちをしながらイメージトレーニングもしていました。
ある日、ふとしたきっかけで「今日はアンダーではなく、上から打ってみよう」と思い、恐る恐る打ったサーブは、驚くほど速く、きれいに相手コートに入ったのです。何年も変わらなかったサーブが、ある瞬間を境に一気に変わりました。それまで積み重ねてきた観察やイメージ、身体の感覚が、ようやく一つにつながった瞬間だったのだと思います。
ティッピングポイントとは何か
このように、目に見えない小さな変化が水面下で積み重なり、ある瞬間に急激な変化として現れる。その転換点を「ティッピングポイント」といいます。変化が起きる直前というのは、実は一番「何も起きていないように感じる」時期です。努力が報われていないように見え、停滞しているように感じます。しかし実際には、次のステージに進むための準備が、静かに進んでいる段階です。
起業や発信活動に起こる停滞
起業すると、やることは一気に増えます。ブログ、メルマガ、SNS発信。それらが日々のルーティンに組み込まれます。ところが、毎日欠かさず発信していても、反応がほとんどない時期が訪れます。数字は動かず、評価もされない。その状態が続くと、「これを続ける意味があるのだろうか」と疑問が湧いてきます。
モチベーションは下がり、無理に続けようとすればするほど心は疲弊します。そして気づかぬうちに、「自分には素質がない」という思い込みを作ってしまうのです。この思い込みは厄介で、一度根づくと、どんなことも続けられなくなります。たとえ明確な目的やゴールがあったとしても、自分が今どこにいるのかが分からなければ、ゴールまでの距離は見えません。距離が見えないまま歩き続けるのは、誰にとっても不安なもの。
しかも、自分自身の状態は、自分では見えないものです。だからこそ、うまく進めないと感じた時には、「今はティッピングポイントの手前にいるのかもしれない」と立ち止まり、自分を俯瞰してみることが大切です。それは書き出すことで観えてくるものがあります。目的地にたどり着くために、何が必要なのか。自分を制限している思考や行動は何なのか。それらを頭の中だけで考えるのではなく、ノートに書き出してみてください。
今までどのような行動をしてきたのか。どこで遠回りをしているのか。目的からブレている部分はないか。制限を設けず、できるだけ具体的に書き出すことで、自分の現在地が少しずつ見えてきます。
踊り場にいるという捉え方
変化がないように見える時期を、「失敗」や「停滞」と捉える必要はありません。それは階段の踊り場に立っているだけです。踊り場は、次の階段を上るために呼吸を整える場所であり、大きくステップアップする前の助走の場でもあります。
今は何も起きていないのではなく、これから起きる変化のために必要な時間を過ごしている。そのように捉えられると、無理に焦ることなく、モチベーションを保ったまま続けることができます。
このコラムでお伝えした考え方は、あなたの状況や環境に合わせて自由にアレンジしてください。学びは、アウトプットすることで初めて整理されます。家族や友人、職場の同僚に、自分の言葉で話してみるのも一つの方法です。そして、学んだ知識やスキルは、使ってこそ意味があります。使うたびに、それは少しずつ自分のものになっていきます。
投稿者プロフィール

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武蔵野美術大学卒業後、東京の建築デザイン事務所に就職。その後、京都で建築士事務所を設立。人の共通心理をとりいれた店舗や狭小住宅の企画設計を生業としていたが、59歳で心筋の半分以上が壊死する重度の心筋梗塞で倒れ、事務所を廃業。紆余曲折を経て住環境ライフコンディショニングコーチとしてリスタート。近年では、企業研修において、それぞれの組織に応じた内容にカスタマイズし提供している。
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