何かを始めたばかりの頃は、変化が見えやすいものです。私がテニスを始めた頃もそうでした。思った以上に上達が早く、自分でも驚くほど手応えを感じていました。ところが、しばらくすると、いくら練習しても、前のように上手くなっている実感が持てない。以前ならできることが増えるたびにモチベーションが上がっていたのに、その変化が止まったように感じたのです。

そんな状態が続くと、人は次第に技術そのものよりも、自分自身を疑い始めます。こんなに練習しても上達しないのは素質がないのではないか。もともと自分には向いていないのではないか。努力の量ではなく、自分の価値そのものに原因があるように思えてしまうのです。

これはテニスに限りません。ダイエットをしていても、ある時期になると体重がぴたりと落ちなくなることがあります。ブログを毎日書いていても反応がなければ、誰も読んでくれていないのではないか、内容が悪いのではないかと不安になります。結果が見えない時間が続くと、私たちは行動をやめたくなります。モチベーションが下がるのは、意志が弱いからではありません。変化が感じられない不安に、心が疲れてしまうからです。

停滞期は変化の途中にある時間

このような停滞期は、一般的に「プラトー」と呼ばれます。成長や成果が一時的に止まったように感じる状態です。ただ、ここで大切なのは、止まっているように見えることと、本当に止まっていることは違うという点です。

人の成長は、いつも右肩上がりではありません。目に見える変化が続く時期もあれば、表面上は何も変わらないように見える時期もあります。しかし、水面下ではしっかりと土台が作られていることが多いのです。テニスで言えば、フォームの安定や体の使い方の感覚が育っているのかもしれません。ダイエットなら、身体が新しい状態に適応しようとしているのかもしれません。ブログなら、書く力や視点、言葉の精度が少しずつ積み重なっている可能性があります。

問題は、変化が見えない時間を「無意味な時間」だと決めつけてしまうことです。ここで焦ると、人は方法を次々に変えたり、やめてしまったりします。けれど本当は、そこで続けることに意味があります。停滞期は、成長が止まった時間ではなく、次の変化のために力をためている時間です。

モチベーションで続けようとすると苦しくなる

停滞期が苦しいのは、やる気がなくなるからだけではありません。やる気がなくなった自分を責めてしまうからです。最初は「頑張ろう」と思って始めたことでも、成果が見えないと「こんなにやっても無駄かもしれない」という思いが出てきます。すると、行動する前から心が重くなります。

ここで必要なのは、モチベーションを上げることではなく、モチベーションが低くても続けられる形に変えることです。気分が乗る日だけ頑張る仕組みでは、停滞期を越えにくくなります。大切なのは、「頑張れる量」ではなく「止まらない量」にすること。

たとえば、毎日1時間練習していたなら、停滞期には20分でもいい。ブログを毎日完璧に書こうとしていたなら、短くても投稿を続ける。ダイエットも、体重だけを見るのではなく、食事や睡眠、歩数など自分が整えている習慣に目を向ける。行動のハードルを下げることは、後退ではなく継続するための手段です。

比べる相手を「昨日の自分」に戻す

停滞期に入ると、多くの人が結果ばかりを見てしまいます。試合で勝てるか、体重が減ったか、読まれたか。もちろん結果は大事ですが、それだけを基準にすると、変化が見えない時期は自分を否定しやすくなります。

そんな時こそ、比べる相手を他人や理想の自分ではなく、昨日までの自分に戻すことが必要です。以前よりフォームを意識できるようになった。食べ方が少し整った。文章を書く手が前より止まらなくなった。そうした小さな変化は、派手ではなくても確かな前進です。成長は、周囲から見て分かる大きな変化だけではありません。自分の内側の姿勢が整っていくことも、大切な成長です。結果が出ない時期ほど、自分の行動や姿勢を認める視点をもつことです。

停滞期を乗り越えるために、自分との関係を壊さない

停滞期を乗り越える方法は、特別な根性を持つことではありません。むしろ逆です。思うようにいかない自分を切り捨てず、自分との関係を壊さないことです。

上達しない時期、結果が出ない時期、反応がない時期。そんな時ほど、「意味があるのだろうか」と考えたくなります。けれど、その問いを「もうダメかも」に結びつけないことです。うまくいかない時期があるのは、挑戦している証拠です。止まりたくなるのは、それだけ真剣に向き合っているからです。

このように考えると停滞期は、自分を試す時間ではなく、自分を支える力を育てる時間なのかもしれません。見える成果がなくても続けた経験は、やがて大きな自信になります。そしてその自信は、単なる成功体験よりも深く、あなたの土台になります。

もし今、思うように進まないことがあるなら、そこで自分を見限らないでください。止まっているように見える時間の中にも、次の一歩を支える準備は確かに進んでいます。焦らず、比べすぎず、少しだけでも続ける。その積み重ねが、停滞期の先にある新しい変化につながっていきます。

今日からできる小さな実践

停滞期を感じた時は、次の3つを意識してみてください。

  • 結果ではなく、続けている行動を記録する
  • 完璧を目指さず、負担を減らしてでも止めない
  • 「向いていない」ではなく「今は見えにくい時期」と言い換える

停滞期は、成長が消えた時間ではありません。成長が見えにくくなっている時間です。だからこそ、その時期に自分をどう扱うかが、その後の歩みに大きく影響します。もし今、思うように進めずにいるなら、自分を責める前に、少しだけ立ち止まってみてください。そして、「それでも私は続けようとしている」と、今の自分を認めてあげてほしいのです。

大きな変化は、いつも劇的に訪れるとは限りません。見えないところで育っていたものが、ある日、突然、カタチになります。停滞期とは、そのための準備期間だと考えて焦らず、あきらめず、今日できることをひとつ。自分を励ましながら続けるその姿勢が、これからの自分を支える力になっていきます。

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投稿者プロフィール

小橋広市
小橋広市
武蔵野美術大学卒業後、東京の建築デザイン事務所に就職。その後、京都で建築士事務所を設立。人の共通心理をとりいれた店舗や狭小住宅の企画設計を生業としていたが、59歳で心筋の半分以上が壊死する重度の心筋梗塞で倒れ、事務所を廃業。紆余曲折を経て住環境ライフコンディショニングコーチとしてリスタート。近年では、企業研修において、それぞれの組織に応じた内容にカスタマイズし提供している。

マイベストプロ
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