80対20の法則と、続けた人だけが越える一線

若い頃、正直に言えば「楽して儲かる方法はないかな」と、よく考えていました。学生時代のアルバイトも、できるだけ楽で、少しでも時給の高いところを探していましたし、その感覚は社会人になってもしばらく残っていたように思います。しかし、社会に出て、特に起業という道を選んでから、はっきりと分かったことがあります。楽して儲かることは、やはりありません。

起業すると、日々の生活はまるで修行僧のようになります。会社員であればしなくてもよいことを、すべて自分で引き受けなければならないからです。メルマガやブログの発信、メールの確認、行動計画の整理、体力づくり、支払いの管理。これらは直接お金を生む仕事というより、「仕事を続けるための準備」に近いものですが、実はこの地味な準備こそが、後の成果を左右します。

すぐに結果を求めてしまう自分

そんな私には、昔から一つの悪い癖がありました。ある程度まで継続できますが、すぐに結果を求めてしまうのです。目に見える成果が出ないと、次第にモチベーションが下がり、最終的にはやめてしまう。この癖は子どもの頃から変わりませんでした。勉強も同じで、やらなかった結果、成績は下から数えた方が早い。「やればできる」と、根拠のない思い込みをしていたのです。

中学を卒業したら大工になるつもりで、職業訓練校に一年だけ通い、その後、棟梁に弟子入りしました。今振り返れば、あの時の経験が人生の大きな転機だったと思います。当時の大工の修行は想像以上に厳しく、いわゆる「見て覚えろ」の時代でした。見ていれば「仕事をしろ」と怒鳴られ、手取り足取り教えてもらえる環境ではありません。今で言うところの、理不尽ないじめに近い体験もありました。

ただ、もしあの経験がなければ、大学へ進学することもなく、中卒のままどんな人生を歩んでいたのか分かりません。そう考えると、当時は辛かった出来事も、後から見れば人生の流れを変える重要な一局面だったと言えます。

恵まれた時代と、やめやすさ

それに比べて、今の時代は本当に恵まれています。検索すればほとんどの情報は手に入り、発信するメディアも無料で使える。やりたい仕事を見つけ、起業しようと思えば、すぐに形にできる環境が整っている。しかし、ここに一つの落とし穴があります。始めることが簡単だからこそ、結果がすぐに出ないと、簡単にやめてしまう人が多い。

結果が出ないと、「やり方が悪いのではないか」と感じ、別の塾に入ったり、新しい教材を買ったりして、再スタートを切る人もいます。ところが、そこで成果を上げる人は、実はごく一部です。ここで関係してくるのが、「80対20の法則」、いわゆるパレートの法則。

これはイタリアの経済学者パレートが提唱した考え方で、簡単に言えば「全体の成果の8割は、全体の2割の要素によって生み出されている」というもの。例えば、会社の売上の8割は、全商品のうち2割のヒット商品が生み出している。仕事の成果も同じで、多くの場合、結果を出しているのは一部の人だけです。塾や教材の世界でも、参加者全体の中で大きな成果を出すのは、やはり2割程度に限られます。

続けた人だけが越える一線

では、その2割の人は、特別な才能を持っているのでしょうか。若い頃の私は、そう思っていました。しかし、この歳になって振り返ってみると、答えは少し違います。彼らは「すぐに結果が出なくても、先の目的につながると信じたことを、淡々と積み上げている」だけです。

目立たず、派手さもなく、毎日の積み重ねは地味そのもの。それでも、続けていくうちに、ある時点で流れが変わります。それまでほとんど反応がなかったものが、急に実を結び始める瞬間があります。これを「ティッピング・ポイント」と呼びます。水が少しずつ温められ、ある温度を超えた瞬間に沸騰するように、努力もまた、ある一点を超えたときに形を変えます。

楽して儲かる道はありません。しかし、信じて積み上げた先には、必ず質の変わるポイントがあります。その「一線」を越える人と、越えられずにやめてしまう人の違いは、才能ではなく、続け方にあります。

では、そのティッピング・ポイントは、いつ、どのように訪れるのか。次回は、この「越える瞬間」に何が起きているのかを、もう少し具体的に掘り下げていきます。

コラム目次へ

投稿者プロフィール

小橋広市
小橋広市
武蔵野美術大学卒業後、東京の建築デザイン事務所に就職。その後、京都で建築士事務所を設立。人の共通心理をとりいれた店舗や狭小住宅の企画設計を生業としていたが、59歳で心筋の半分以上が壊死する重度の心筋梗塞で倒れ、事務所を廃業。紆余曲折を経て住環境ライフコンディショニングコーチとしてリスタート。近年では、企業研修において、それぞれの組織に応じた内容にカスタマイズし提供している。

マイベストプロ
https://mbp-japan.com/kyoto/hirokobashi/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA