先日、友人からこんな質問をされました。「小橋さんは何かに執着があるの?」質問された瞬間、少しだけ言葉に詰まりました。今の自分なら考えて答えますが、もし昔の自分であれば迷わずこう言っていたと思います。「過去の栄光です」と。

建築家として活動していた頃、デザインで賞をいただいたり、ガラス作家として大きなイベントをプロデュースしたりと、それなりの実績を積み重ねてきました。それらは自分を支える大切な柱であり、自信の拠り所でもありました。しかし同時に、気づかないうちに「それがあるから大丈夫」と、自分を守る鎧のような存在にもなっていたのです。

そんなとき、パートナーから言われた一言が、私の内側を大きく揺さぶりました。「過去に執着するより、大切なのは今じゃない?」その言葉を聞いた瞬間、これまで積み上げてきたものにしがみついていた自分の姿が浮かび上がりました。大切にしていたはずのものが、どこかで自分を縛っていたことに気づいたのです。

頭の中では、これまでの経験や実績が一気に動き出し、何とか自分を正当化しようとする感覚がありました。まるでスペックの低いパソコンが重たいアプリを同時に動かしているように、思考は重く、まとまりを失っていきます。そして、ある瞬間にふっと止まりました。真っ白になった頭の中で、潮が引くように過去への執着が静かに離れていく感覚がありました。

手放すことには勇気がいります。これまで自分を支えてくれていたものを手放すのですから、不安があって当然です。しかし、その一歩を越えたときに見える景色はまったく違います。新しいことに挑戦するとき、過去への執着は無意識のブレーキになります。「失敗したくない」「今の自分を守りたい」そうした思いが行動を止めます。

ここで気づいたのは、執着が強いときほどセルフイメージが低くなっているということ。過去にすがることでしか自分を保てない状態は、「今の自分では足りない」という感覚の裏返しでもあります。だからこそ、自分をどう捉えるか、どんな意味づけをするかがとても重要になってきます。

そんな頃、尊敬する方からこんな問いをいただきました。「あなたという人間を、モノに例えると何ですか?」当時の私は何も答えられませんでした。自分が何者なのかを言葉にできるほど、内側が整っていなかったのです。

しかし今なら、はっきりと答えられます。「私は、羅針盤です」と。羅針盤は常に北を指し、嵐の中でもその役割を変えることはありません。船乗りにとっては欠かすことのできない存在です。私自身もまた、どんな状況でもブレない軸を持ち、これから新しい一歩を踏み出す人の道標でありたい。そう思うようになりました。

気持ちが揺らいだとき、行動に迷いが生じたとき、私はこの「羅針盤」というイメージを思い出します。すると、自分の軸が静かに戻ってくる感覚があります。セルフイメージは、単なる思い込みではなく、自分の行動や選択を支える“内側の基準”になります。

・過去に支えられているか、それとも縛られているか
・今の自分を信じられているか
・自分をどんな存在として捉えているか

この問いに向き合うことで、自分軸は少しずつ整っていきます。もし今、迷いや不安を感じているなら、一度立ち止まって問いかけてみてください。「自分は、何に例えられる存在だろうか」その答えの中に、あなた自身の羅針盤が見えてくるはずです。

この「羅針盤」という言葉は、実は私自身が大切にしているテーマでもあります。
日々の気づきや、自分軸を整えるヒントを、週1回のメルマガ「羅針盤」として発信しています。
もしよろしければ、日常の中で少し立ち止まり、自分の進む方向を見つめ直す時間として、読んでみてください。

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投稿者プロフィール

小橋広市
小橋広市
武蔵野美術大学卒業後、東京の建築デザイン事務所に就職。その後、京都で建築士事務所を設立。人の共通心理をとりいれた店舗や狭小住宅の企画設計を生業としていたが、59歳で心筋の半分以上が壊死する重度の心筋梗塞で倒れ、事務所を廃業。紆余曲折を経て住環境ライフコンディショニングコーチとしてリスタート。近年では、企業研修において、それぞれの組織に応じた内容にカスタマイズし提供している。

マイベストプロ
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