ノートに書けば願いが叶う?──実は「脳の使い方」の話

「ノートに書けば願いが叶う」
こんな言葉を聞くと、少しスピリチュアルな印象を持つ方もいるかもしれません。正直に言えば、書いたからといって必ず願いが叶うほど、人生は単純ではありません。ただ、それでも「書き出すこと自体に意味がある」のは、脳の仕組みを知ると納得できる話です。書くという行為は、自分の考えや願いを外に出し、意識を「見える化」すること。見える化された情報は、脳にとって非常に扱いやすくなり、「これは重要だ」という明確な指示になります。つまり、ノートに書くことは、願いを叶える魔法ではなく、脳にスイッチを入れる行為です。

私たちの脳は、毎秒1,000万ビットを超える情報を処理していると言われています。しかし、私たちが自覚できているのは、そのほんの一部にすぎません。見えていないのではなく、見えていても意識に上がっていないだけ。だからこそ、意識の向け先を変えるだけで、世界の見え方は大きく変わります。書き出すとは、その「向け先」を自分で決めるということ。

脳は「意識したもの」を現実として拾う

例えば、交差点で信号待ちをしている場面を思い浮かべてみてください。目を閉じて「青色を探せ」と心の中で脳に伝え、パッと目を開けた瞬間、それまで気づかなかった青色の看板や車、服などが一気に目に飛び込んでくるはずです。同じように「赤ん坊を探せ」と意識すれば、視界の中にいた赤ん坊の存在が、まるで写真を切り取ったように浮かび上がります。これは偶然ではありません。脳が「探す対象」を理解した途端、膨大な情報の中から必要なものだけを瞬時に拾い上げているからです。

この仕組みは、日常の中でもよく起きています。「次はこのクルマに乗りたいな」と思った途端、街中でそのクルマを頻繁に見かけるようになる。交通量は何も変わっていないのに、なぜかその車種だけが目に留まる。これは、そのクルマが増えたわけでも、運が良くなったわけでもありません。脳が「これは自分に関係のある情報だ」と判断し、優先的に意識へ届けているだけです。私たちは、意識したものしか現実として受け取れない。その前提に立つと、日々何を考え、何を意識しているかが、いかに大切かが見えてきます。

潜在意識は、質問を与えると止まらずに動き続ける

潜在意識をうまく活用するために重要なのは、「良い質問」を脳に与えること。「自分は何を大切にしたいのか」「これから、どんな状態で生きていきたいのか」。こうした問いを一度はっきりさせると、脳は驚くほど忠実に働き始めます。しかもその働きは、起きている時だけではありません。寝ている間でさえ、脳は問いに対する答えを探し続けています。

そして、必要な情報やヒントを見つけた瞬間、脳はそれを意識の表面に押し上げます。「あ、これだ」という直感や閃きは、突然降ってくるものではなく、脳が裏側で準備を続けてきた結果です。よく私は、この状態を「赤外線誘導ミサイル」に例えます。一度ロックオンされると、情報は自然と集まり、行動の方向性も定まっていく。だからこそ、最初にどんな質問を脳に投げるかが、とても重要なんです。

書き出して脳にアンテナを立てる

ノートに書く、色紙に書く、付箋に書いて貼る。方法は何でも構いません。大切なのは、「私はこれを意識しているよ」と脳に明確に伝えること。その瞬間から、脳はアンテナを立て、あなたの願いや目的に関係する情報を無意識のうちに集め始めます。それは、行動のヒントとなり、人との出会いにつながり、結果として人生を少しずつ動かしていきます。

ちなみに私は、目的を色紙に書き、目の前の壁に貼っています。毎日じっと見つめるわけではありませんが、ふと視界に入るたびに、脳は静かにアンテナを立て直してくれる。「願いが叶うかどうか」よりも、「自分の意識が今どこを向いているのか」。そこを整えるための実践として、書き出す習慣はとても現実的で、再現性の高い方法だと感じています。

もし最近、「自分が何を目指しているのか分からなくなっている」と感じているなら、まずは一行で構いません。ノートに書くことから、始めてみてはいかがでしょうか。

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投稿者プロフィール

小橋広市
小橋広市
武蔵野美術大学卒業後、東京の建築デザイン事務所に就職。その後、京都で建築士事務所を設立。人の共通心理をとりいれた店舗や狭小住宅の企画設計を生業としていたが、59歳で心筋の半分以上が壊死する重度の心筋梗塞で倒れ、事務所を廃業。紆余曲折を経て住環境ライフコンディショニングコーチとしてリスタート。近年では、企業研修において、それぞれの組織に応じた内容にカスタマイズし提供している。

マイベストプロ
https://mbp-japan.com/kyoto/hirokobashi/

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