男性が一人で女性が訪れる店舗でキョロキョロしていたらどう思います?

今ならスマホで撮影されてネットにさらされるかもしれません。東京で店舗デザインをやっていた頃、それをやっていました(笑) 最終的には女性スタッフと一緒にカップルのふりをして行くことになりましたけどね。

店舗デザインの世界では、洗練されたデザインはもとより機能性を求められます。店舗デザイナーだった私が日頃から注力したのは、女性客の行動パターンを観察することにより、商品の配置だけでなく、店内の滞在時間や動線に大きな影響を与えるポイントを見つけることでした。

数多くある店舗の中で最も興味深かったのは、ブティックのミラーの配置です。なぜなら、ミラーの位置ひとつで売り上げが大きく変わることがデータにより明らかになっているからです。

ミラーは自己認識と自己表現のスペース

ミラーの設置場所は、お客様のショッピング体験を向上させ、店舗の雰囲気を高めることができます。特に女性のお客様は、メイク、服装選び、感情のチェックなど、多くのシーンでミラーを利用します。男性と比較しても、ミラーを通じて自分自身と向き合う時間が長いのです。

この事実は、人間の心理と行動の深い理解を必要とする店舗デザインのプロセスにおいて、貴重な示唆を提供してくれます。例えば、ミラーの位置は、そこで立ち止まってミラーを見るお客様が他のお客様と目が合わないように配慮されるべきです。これにより、お客様はリラックスして自身の姿を確認することができます。

ところで、ミラーの使い方は色々あります。笑えなかった私は毎日ミラー見ながら笑う練習をしていました。私たちはミラーを見ることで、ネガティブな感情を抱えた時に自己と向き合おうとします。しかし、自分自身の真の姿は他人を通じてしか見ることができません。

スナップ写真にはミラーでは捉えられない自然な表情が写り、内面が反映されます。そのため意図しない表情を捉えた写真は、「私じゃない!」と思う反面、自己理解を深めるための重要なツールになります。

女性が訪れる店舗デザイナーの経験は、私たちが自分自身をどのように見ているか、またどのようにしてより良く内面を磨けるかについて深い洞察体験を提供してくれました。

ミラーは単に外見を映し出すだけでなく、私たちの内面と感情を映し出す魔法のアイテムです。あなたのその表情を見て他者は無意識的に判断して行動を起こします。他者との関係性において、表情は内面を映し出すミラーであることから、人間関係の出入口は「表情」と言っても良いかもしれませんね。

投稿者プロフィール

小橋広市
小橋広市
武蔵野美術大学卒業後、東京の建築デザイン事務所に就職。その後、京都で建築士事務所を設立。人の共通心理をとりいれた店舗や狭小住宅の企画設計を生業としていたが、59歳で心筋の半分以上が壊死する重度の心筋梗塞で倒れ、事務所を廃業。紆余曲折を経て住環境ライフコンディショニングコーチとしてリスタート。近年では、企業研修において、それぞれの組織に応じた内容にカスタマイズし提供している。

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